S30Zのレストア風景


46 手紙

まずは誕生日おめでとう。
昔、親父が言っていた「いつか一緒に酒を飲みに行こう」という願いはとてもかなえる気になりませんが、今も家族全員、無事で居られると言う事はとても幸せな事なのだと思います。
ところで、カメリアダイヤモンドのCMで「このへんで親孝行しておかないと間に合わない年頃になってきました」と言っていました、今の親父を見ていると正に「その通りだ」と思います。
親父・・・最近何目標にして生きてるんですか?って言うか生きているんですか?
定時?に出勤して、定時に帰って・・・後は閉じ込められたように自分の家の隅の部屋でテレビ見てたり・・・酒飲んで家族に虐げられていたり・・・居酒屋に行けば帰りに自分の車を忘れて帰ってくるし・・・
見ていて痛々しいんですけど・・・

人って目標や夢があるからこそ生きがいってモノを感じたり出来るんだと思います。
親父の話、いつ聞いても冴えない話ばかりですが、ある時、親父が話しているのを聞いて「あ、この頃は夢があって楽しかったんだなぁ」と思うことがありました。
初めてもらったボーナスをベッドの上に並べて2人で考えたそうですね、どう使おうかを・・・・
で、買ったんですよね「Z」を。

その頃の話をすると凄く細かい事まで説明していたのを覚えています。
バンパーもテールカバーも全部白く塗ってあった事
グッドイヤーのタイヤを大枚はたいて買った事
アルミで手作りのリアバイザーの事
タクシーにカマ掘られて修理してもらったら全然色が違っていて、文句言いに行ったら「ヤ○ザ」が事務所にいて何も言えずに帰って来たこと
そして・・・最後に飲酒運転をして警察に追いかけられ中央分離帯でひっくり返って生死の境をさまよった事・・・
そのあとは本当に心臓が止まったりと・・・大変なリハビリがあったと聞きます、そしてこの話の輝きもここで時を止めています。

酒・・・いつも親父に付きまとうこの言葉。
親父を見ているとまるで魔法にかかったみたいに陽気になりますね。
魔法の薬・・・略して麻薬。
僕は思いました、あの時、酒という麻薬が夢を奪ってしまったんだと、そして取り戻す事も出来ずに止まってしまっているんだと。
なんとなく毎日を過ごしている親父の姿を見続けてきた自分はそんな頃からおぼろげに「いつかその時の夢を再現してプレゼントしよう」と思っていました。

そして僕は1年前からZの製作を開始しました。
小さなパーツ1つ1つを写真から解析し、あらゆる手を尽くして収集する。
朽ち果てかけていたZの再現とパーツの収集、全てではないけどこの日に一応間に合いました。
そして今、Zは駐車場であの日のご主人様を待っています、玄関に掛かっている鍵を持って再会してあげて下さい。
あの時手にした夢は「酒」という麻薬によって切り裂かれました。
今、あの日あの時だとしたら、親父はまた酒に酔ったままあのZに乗りますか?
これからは魔法で作った夢の中じゃなく、自分がかなえた夢で酔ってくれることを願っています。

親父よ!常にかっこよくあれ!